ジムニーJB23に牽引フックとMTタイヤを装着して雪道へ

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滋賀県某所の林道にて

単に見た目重視、ドレスアップ的な意味でマッテレをつけたはずが、ショップの社長さんの「雪の林道はめちゃオモロいでえ」という言葉に乗せられて、なぜかすっかり雪道の面白さにはまってしまった、という話です。マッテレは圧雪や凍結路には弱いですが、新雪ならそこそこ走れる性能があるので、ほとんど車の通らない林道であればかなり楽しめます。

MTタイヤ(マッテレタイヤ)装着の経緯

滋賀県某所の林道にて

僕のJB23ジムニーは8年間ずっとATタイヤをはいていました。以前は車で出かけることが多かったので、燃費や耐摩耗性や舗装路でのグリップ性能などを重視してのATタイヤの選択でした。ところが2010年の夏に小さなバイクを買って以来この6年ほど、ほとんど出番がなくなっていました。バイクにばかり乗って車に乗らなくなってしまったためです。

そういうわけで走行距離が少なかったので、8年前につけたATタイヤ(ヨコハマ ジオランダーAT/S 175/80 R16)の溝は7分山以上残ったままだったのですが、経年劣化でヒビ割れがひどくなり、タイヤの交換を考えて自動車屋さんに相談に行きました。あまり乗らないのであれば燃費や耐摩耗性などは考えなくてよくなるので、今度は見た目を重視してマッテレでもいいかな、と考えたわけです。

そうした考えを自動車屋さんの社長に伝えたところ「走行1,000kmほどの中古のマッテレがある」と言われました。トーヨー TRANPATH M/T 195R16です。このタイヤはなぜかメーカーのホームページから消えていますが、いまも製造は続いており、値段の安さから根強い人気のあるモデルです。僕としては何の不満もないため、このトランパスMTを装着することに。

TRANPATH M/T 195R16 の男らしいブロックパターン

上が装着直後の写真。農作業の車両を思わせるすごいブロックパターンで、見た目は格好いいですし、舗装路での乗り心地や操作感はさすがにATタイヤよりひどい(とりわけ直進性が著しく悪化したので後で補正した)ですが、思ったほどロードノイズもひどくなく、燃費の落ち込みもなく、大まかにいえば満足な内容です。

195タイヤということで純正の175に対して20mmも太くなるので、はみ出しが気になりましたが、装着してみたら問題ありませんでした。タイヤ径が大きくなったことによるトルクの落ち込みやスピードメーターの誤差も気になっていましたが、いうほどのものでもありませんでした。ここまでなら、見た目が格好よくなってよかったね、というだけの話なのですが…

ジムニーで行く雪の林道は面白いよ、という誘惑

先述のように2010年以降の僕はバイクにばかり乗っているわけですが、バイクにとって雪は大敵です。できるだけ日本海沿岸や山間部などを避け、雪のない道を選んで走ってはいますが、そうは言っても年に数回は雪に遭遇し、ひどい雪に行く手を阻まれることも多々あります。例えば今年なら福岡県で、昨年は大分県で、それぞれひどい目に遭いました。

国道211号 嘉麻峠付近

上の写真は今年1月の大雪のときに、福岡県の国道211号、嘉麻峠付近で身動きが取れなくなったときの様子です。とんでもない大雪でどんどん雪が降ってきて、坂を登れなくなって引き返しました。ラリータイヤ(MICHELIN T63)を装着したKLXはこうした新雪上ではわりとグリップしますが、それでも峠の急な上り坂には太刀打ちできません。

下の写真は昨年1月に大分県の県道11号(やまなみハイウエイ)牧ノ戸峠付近でカチカチの凍結路を越えたときの様子。こちらは凍結路面の上に新雪がうっすら積もっている状況で、標高差のある峠を越すのには本当に苦労しました。このときの峠の気温は氷点下6℃で、寒さもあってかなり過酷でした。

牧ノ戸峠付近

いずれにしても、バイクで雪や凍結の路面を走行するというのは命懸けで、楽しいどころかひたすら恐怖でしかありません。バイクで雪道を行けばたいてい1度や2度は転倒もしますから、怪我の心配も絶えませんし、ブレーキレバーやクラッチレバーを折損して走行不能になる危険もあります。そうなれば遭難です。冬のバイクは苦労の連続で、あまりいいものではありません。

ジムニーを持っていったショップの社長さんとそんな話をしていると、社長さんはひどい誘惑をしてきました。曰く「ジムニーで行く雪道は死ぬようなこともないし寒くもないし、めっちゃオモロいで。せっかくマッテレにしたんやから冬の間はジムニーに乗りなはれ」という具合です。

確かにジムニーなら、バイクと違って屋根があって暖房も効きますから身体に余裕もありますし、激しくスリップしても命まで失うようなことはなさそうです。バイクで滑る路面は単に怖いだけですが、四輪なら滑る路面の面白さも堪能できるというわけです。現在の僕の居住地は大阪府ですが、近郊の山でもなかなか楽しめるという話をされてしまうと、もう居ても立ってもいられません。

ジムニーにレスキューグッズを装備

ジムニーで雪遊びする気は満々になったものの、車での雪道には慣れておらず、いまいち勝手がわかりません。バイクなら雪道の運転はある程度は慣れていますが、勝手のわからない車では何があるかわかりません。万が一のときに備えて、出かける前にレスキューグッズを装備しました。案外と僕は慎重派で、このあたりの装備が足りないと出かける気にならないんです。

雪山に入るなら、スタックして他車にレスキューをお願いする可能性がありますから、少し頑丈な牽引フックが必要です。ジムニーには純正のフックがもともと着いていますが、これは積載車に固定するためのタイダウンフックで、牽引用ではありません。平地での牽引になら使えるかもしれませんが、脱出用に使える強度はありませんから、車外品の牽引フックを新たに装着する必要があります。

モンスタースポーツ牽引フック リアとワイルドグース スペアタイヤサイドスコップホルダー
モンスタースポーツ牽引フック フロント左
モンスタースポーツ牽引フック フロント右

また牽引のためのロープも必要ですし、そもそも他車にレスキューをお願いせずとも自力で脱出するための装備として、スコップやスノーラダーは必須です。さらに言えばハンドウインチツリートランクプロテクターなどがあればより心強いのでしょうが、今回はそこまでは必要ないと判断しました。そういうわけで、今回準備したのは以下のものです。

モンスタースポーツ ジムニー牽引フック3点セット
フロント左右とリアの運転席側の3点セットで、フロントの取り付けはタイダウンフックの穴空け加工が必要。前後とも社外バンパー用。僕のジムニーは前後バンパーともモンスタースポーツXCLウレタンバンパーを装着しているのでフィッティングも抜群です。
牽引ロープ(両端フック付き5t対応)
スタックして通りすがりの車に助けてもらうことなどを考えると、牽引フックをつけているだけでは足りず、自分でも牽引ロープを持っている必要があると思い購入。脱出用なので伸縮しないタイプで、また常時車載するために軽量な樹脂製を選択しました。
ワイルドグース スペアタイヤサイドスコップホルダー
社外にスコップを装着するための部品。スペアタイヤカバーと同時装着できるワイルドグース製を選択。車内にスコップを置かなくて済むというメリットだけでなく、車の後ろからの見た目がワイルドになって格好いいというドレスアップ的な目的にも適います。
ステンレス製スコップ剣型
上記のホルダーを使って車外に積載するため、錆に強いオールステンレス製を選択しました。ただ、あっという間にサビサビになったりはしませんが、やはりいくらかずつは錆びてきます。とはいえ遠目に見ればピカピカで格好よく、ドレスアップ効果もあります。もちろん実用性は十分です。
スノーラダー
雪や砂や泥などでのスタックから脱出するためにタイヤに挟むラダーやマットの中から、樹脂製で軽く常時車載できるものとしてスノーグラバーマットを選択。これとスコップがあればたいていのスタックからは自力で脱出できますので、雪道だけでなく砂や泥の道を行くときも安心です。

これくらいの準備をしておけば、単独で雪山に入る怖さも少しは減り、楽しく遊んでこれるものと思います。さっそく、福井県北部で新雪を体験し、滋賀県北部で圧雪を体験しに行ってきました。

新雪の上ではマッテレは素晴らしい性能

1月には石川県で仕事があったので、その往路の福井県北部で新雪を体験してきました。この日は北陸地方は雪の予報でしたが、大阪の自宅を出て滋賀県の北部に至るまではずっと快晴で、ちゃんと雪遊びができるのか不安でした。それが国道161号線の滋賀県と福井県の県境あたりで吹雪になり、追坂峠(おっさかとうげ)から追分あたりまでは少ないながら積雪もあり、かなり期待しました。

ところが敦賀に出てみると路面の雪はほとんどなくなり、降ってくるのもミゾレになり、今冬の雪の少なさを思い知らせれました。さらに進んで国道8号線で鯖江に至ったあたりで平野部のどこを見ても積雪がなくなってしまい、山間部に入らなければ積雪はないものと判断し、福井市街を過ぎたところで山間部へと進路を変更。標高を上げてやっと雪の風景に出会えました。

福井県北部の峠。新雪はグリップがいい

この時の雪は新雪で、積雪深はだいたい10〜20cmほど、深いところでも30cm強と、なかなかのコンディションでした。雪質は重く、シャーベット状になっている場所も多いような状況です。気になるマッテレの雪上性能は、新雪上では何の問題もなく、スタッドレスと同等かそれ以上と思われるほど。アンダーステアは強いですが、そうは言っても泥と同等くらいのものです。

吹きだまりになっているような場所にもトツゲキしてみましたが、デフを擦る程度の深さまでなら4WD-Hiモードで何の不安もなく走れて、いささか拍子抜けするほどでした。重い雪質と積雪深のおかげでタイヤの転がり抵抗が大きいため、減速時の不安もほとんどありません。事前に思っていた以上にマッテレの雪上性能は高いと感じました。

圧雪路や凍結路でのマッテレはかなり厳しい

2月に入って福井市で仕事上の勉強会に主席するために再び北陸方面に行くことになり、今度は滋賀県北部の林道に立ち寄りました。前回の新雪とは打って変わり、この時は圧雪や凍結の路面がほとんどです。圧雪路や凍結路ではマッテレのグリップ性能は無いようなもので、ツルツルと滑ってしまい加速も減速も操舵もとても困難なものでした。

滋賀県某所の林道。圧雪でよく滑る

4WD-Lowモードでゆっくりいけば、横滑りしながらも何とか前には進みます。しかし減速はといえば、ブレーキペダルにちょっと足を置いただけでABSが作動するような状態。操舵のほうも、上り坂ではオーバーステアが強く、下り坂ではアンダーステアが強すぎて、急なカーブと急なアップダウンの多い林道では、ステアリングとアクセルの操作はシビアなものが要求されます。

そんな具合で、圧雪や凍結路面でのマッテレタイヤの性能はかなり劣っており、スタッドレスタイヤとは比較になりません。もしマッテレで雪山に行きたいという人がいたら、できるだけ他人に迷惑をかけないための最低限の装備は持っていくべきだとお伝えしたいですし、マッテレで行く圧雪路や凍結路はかなり危険だということも強調しておきたいところです。

ただ、安全性や快適性ではスタッドレスに劣るという話であって、楽しさという観点ならまた別です。正直、マッテレで行く雪山の楽しさは格別で、ツルツルズルズルを楽しめる人なら最高の体験になること請け合いです。それに危険をともなうとは言え、少なくともバイクで行く雪道とは危険さの度合いがまるで違います。個人的には非常に楽しめました。

新雪か小締まり雪を狙う

上述したように、圧雪路や凍結路でのマッテレの操縦性はかなり悪く、危険をともないます。除雪されておらず、しかもいくらか交通量のある道路は、他の車に雪が踏み固められているため、できることなら避けたほうがいいでしょう。自分が危険な目に遭うのは自己責任ですが、他人を巻き込む可能性もありますから、こうした場所にスタッドレス非装着の車を出さないのは大人としては当然です。

しかし、新雪やそれが少し古くなった小締まり雪の路面なら、マッテレでも楽しく走ることができます。ほとんど交通量のない林道であれば、雪が踏み固められていることはそうありませんから、マッテレでの雪遊びに最適です。最近は未舗装林道が少なくなり、四駆遊びができる場所も限られてきましたが、雪が降れば近場の舗装林道もいい遊び場になります。

滋賀県某所の林道。快晴で気持ちがよい

あくまでも自己責任ですし、何かあったときのためのレスキューグッズなど最低限の装備はしていくべきですが、ともあれ、マッテレで行く新雪や小締まり雪の林道はとても楽しいものです。冬の間はあまりバイクで遊べず寂しい思いをしてきましたが、これからの冬はジムニーで楽しみたいと思います。

突然の降雪・積雪・チェーン規制でも焦らない

その後、滋賀県から三重県に至る高速道路で大雪に見舞われるアクシデントがありました。大量の積雪で除雪が間に合わず、圧雪で凸凹になった路面にどんどん雪が降り積もっていくという状況です。こうした状況下でも、マッテレと45mmリフトアップの効果は素晴らしく、安定して走破できました。

雪の新名神

交通量さえ少なければ、もちろんスタッドレスほどではないものの、高速道路での雪道走行も問題ないことがわかりました。また、マッテレはチェーン規制を通過できるという話は聞いていたものの、実際に通過できることもわかりました。これはなかなか便利です。

またこのとき途中休憩した土山SAは積雪深15cmほどで、身動きできなくなった車が待機していたり、大型貨物がタイヤチェーンを装着したりしていましたが、そうした車をよそに、SA出入り口の長いスロープもものともせず、まったく普通に走破できました。

雪の土山SA

上の写真でもわかるとおり、TRANPATH M/T 195R16の排雪性・セルフクリーニング性は高く、湿った新雪上でもタイヤ溝に雪が詰まることはなく、常に安定して性能を発揮します。ドレスアップ目的で装着したマッテレですが、装着後の満足度はかなり高いものになっています。

トーヨー TRANPATH M/T 195R16Cのフィッティング

今回装着したトーヨー TRANPATH M/T 195R16ですが、装着前にはハミタイ(タイヤのはみ出し)が懸念されていました。このタイヤは純正の175幅に対して195とかなり太いため、また僕のジムニーはオフセット+20の SSJ RACING アルミホイール スーパーホワイトが装着されているためです。

実際に装着してみると、ハミタイもなく、ボディーとの干渉もなく(ただし僕のジムニーは45mmリフトアップです)まったく問題ありませんでした。走行音も気になるほどではなく、その後5,000kmほど走行した後も摩耗は少なく、ライフ性能も十分です。他のマッテレタイヤより価格も安く、かなりおすすめ度の高いタイヤといっていいと思います。