JB23ジムニーのスピーカー交換とサブウーハーの追加

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アウトドアでの快適性こそがJB23ジムニーの真骨頂

二度のスピーカー交換、サブウーファー交換を経て、やっと満足のいくカーオーディオ環境が得られたのでその記録。JB23ジムニーという車の性格を考慮し、少ない予算でそれなりの高音質を獲得するための機材選択とデッドニング作業について。

前提と方向性

オーディオ環境を考えていくにあたっての大前提ですが、JB23ジムニーという車の性格上、そもそも完璧なオーディオ環境などはあり得ません。高回転を常用するエンジン、大きな走行ノイズを発するマッテレタイヤ、貧弱な防音、余計なものを置くことができない狭い車室など、音響改善には不利な条件が揃っています。

このため、大きな予算を注ぎ込んで最高の音質を求めるような方向性は現実的はありません。最高の音質を求めるのであれば、そもそも車を乗り換えるほうが手っ取り早いと言えます。JB23ジムニーのオーディオ環境の向上を目指すのであれば、その前提は以下のようになるでしょう。

  • できる限り小さな予算の中で、可能な限り良い音を手に入れる
  • 空間を犠牲にしないため、ヘッドユニットもスピーカーも純正の取り付け位置を活用し、サブウーファーはシート下におさまるものを導入する

ヘッドユニットには特にこだわりません。僕が使っているヘッドユニットは現在のものが3台目にあたるものの、現在のものも含めて、すべて2DINオールインワンカーナビです。JB23ジムニーの狭い室内に余計なものを増やしたくないことと、あまり豪華そうなものを装着したくない(軽自動車のくせに頑張りすぎだと思われたくない)ためです。

2DINのスペースだけでナビからオーディオまですべて含み、かつ最低限動作すればよいという前提で選んでいますから、ヘッドユニットのオーディオ性能は決して高くありません。現在使用しているのは2016年末に購入したECLIPSEのAVN135M1で、当時の価格は34,000円、iPodと接続できることが購入の決め手でしたが、まあ安物です。

この前提で、スピーカーとサブウーファーの改善を中心に、オーディオ環境の改善に取り組んでいきます。

従来のスピーカー周辺の状況

最初のスピーカーの交換は、新車購入からほどない2001年頃に実施しました。導入したのは、量販店で購入したADDZEST(クラリオン)SRT103Y2です。よくあるカスタムフィット(純正置き換え型)スピーカーで、直径10cmのコアキシャル3ウェイ、購入価格は左右セットで3,700円程度だったと記憶しています。普及グレードのカスタムフィットスピーカーの中では最安水準の品です。

これをAMラジオ仕様のチープな純正フロントスピーカーと置き換えたところ、純正とは比較にならないほど良くなり、音楽が聴ける最低限度のレベルに達しました。この時点では大いに満足です。解像度が高く艶のない硬質な音はノイズの多い車両に装着するにはちょうどいい音質で、JB23ジムニーとの相性は抜群に良いと感じました。

これに気をよくして同製品をさらにもう1セット買い求め、リアにも装着しました。JB23ジムニーは全グレードがリアスピーカーレスですが、リアスピーカー設置用の穴(直径12cm)はありますので、純正位置に装着しました。しかし残念ながらリアでは期待したほどの効果はなく、こもったような音しか出ず、耳障りにならないようリアのボリュームは絞って運用することになりました。

最初のサブウーファー(購入から1年も経たずに壊れた)は機種名すら思い出せませんので、2001年に導入した2台目のものだけ紹介します。ケンウッドのKSC-WX13というもので、重低音だけではなく160Hzほどの中低音までカバーする製品です。4つの埋め込みスピーカーがどれも直径10cmという低音に弱いものだったため、中低音を補うことができるKSC-WX1は非常によい組み合わせでした。これは助手席の後ろにただ置く形で運用していました。

最後にツイーターです。スピーカーの取り付け位置が低いJB23ジムニーでは、どうしても音が下から上がってくる形になり、音場が不自然になります。定位を上げて音場を正常化するために、ダッシュボード上にツイーターを設置しました。選んだ製品はケンウッドKFC-ST74で、音場こそ理想的になったものの、そのままでは高音のシャリ感が強く、イコライザーで高音を絞って運用していました。

この構成は特に意識して選択したのではなく、間に合わせのツギハギで安物ばかり次々に選んだ結果としてこうなった、というものでした。結果としては特段の不満もなく、むしろ大いに満足しており、2001年から2017年まで16年ほど、このまま運用してきました。しかしサブウーファーが壊れたことをきっかけに、これらのすべてを見直していくことになります。

サブウーファー交換

長年にわたって活躍してくれたKSC-WX1が壊れ、16年ぶりのサブウーファー選びです。ネット上の情報を大いに参考にし、カロッツェリアTS-WX120Aを選択しました。シート下におさまるコンパクトなサイズで、しかも手ごろな価格、十分な性能ということで、あまり悩むこともなく選択し、商品が届くとすぐに装着しました。

従来のサブウーファーは助手席後部のフロア上にただ置いていたのですが、今回のTS-WX120Aはサイズがコンパクトで助手席下に収めてもまだ余裕があったため、サブウーファーを固定するための木の台(オーディオボード的なもの)を制作しました。ホームセンターで買ってきた集成材の板に足になる角材をビス留めし、黒く塗装したものです。

サブウーファー固定用の台

足の部分の角材には面ファスナー(マジックテープ)のオスを貼り付け、助手席下のニードルフェルト製フロアマットにガッチリ固定できるようにしました。この台にTS-WX120Aをビス留め固定し、助手席シート下に設置します。設置した状態が下の写真です。レカロ純正シートレールに干渉することなく、うまくはまりました。

助手席シート下に収まったサブウーファー

しかしこのカロッツェリアTS-WX120A、カタログスペックでは再生周波数帯域が30Hz〜160Hzとなっていますが、綺麗に鳴るのは35Hz〜110Hz付近までの低音のみ。以前のケンウッドKSC-WX1は170Hz付近の中低音まで出ていて、埋め込みスピーカーの中低音不足を補ってくれていたため、一気に中低音が痩せ細ってしまいました。

この結果、サブウーファーが担当する100Hz付近までの低音から、埋め込みスピーカーが担当する160Hz付近の中低音までの音域に大きな谷ができてしまい、音のつながりが非常に悪くなってしまいました。とりわけベースラインの綺麗な曲では、聞くに耐えないほどバランスの悪いひどい音になってしまいました。

なお、TS-WX120Aそのものは悪くありません。手頃な価格、コンパクトなサイズ、わざとらしくない自然な重低音と、JB23ジムニーに搭載するには完璧に近い素晴らしい製品です。悪いのは中低音の再生に難のある埋め込みスピーカーのほうです。これを改善するべく、対策を検討しました。

中低音にできてしまった谷をなくすための改善といっても、ベース車両がうるさい軽自動車ですから、あまり大きな予算をかけて贅沢な装備をする気はありません。そこでまず、デッドニングをしてみることにしました。デッドニングを検討した理由となったのは「フロントスピーカーもリアスピーカーも同じユニットを搭載しているにも関わらずリアスピーカーだけ鳴りが悪い」という事実からです。

デッドニングの理論

まったく同じスピーカーユニットでも、取り付ける環境によってまったく音色が変わるということはすでに実証済みです。ならば、スピーカーユニットを取り付ける環境を改善することで、スピーカーが持っている本来の性能を発揮させることができるはずでしょう。とはいえ設置場所は変更したくないので、残された手段はデッドニングのみとなります。

なお、もともと前後に取り付けていたSRT103Yは直径わずか10cmのスピーカーにもかかわらず、カタログスペックによれば再生周波数帯域は40Hzの重低音からとなっています。もしカタログスペックに近い性能を発揮させることができるのであれば、中低音の谷は余裕で解消できるはずです。中低音の谷は100Hz付近から160Hz付近ですので、そのあたりの音を埋め込みスピーカーで出すことを目指します。

デッドニングで低音の発音を改善したい場合にすべきことは、スピーカー背面から出る逆位相の音波がスピーカー前面に回り込むことがないようにすることです。スピーカーの前面と背面を遮断するとともに、背面から出る音波を吸音するというのがその内容となります。Wikipediaの密閉型スピーカーのページによれば、その理論は以下のようなものです。

スピーカーの振動板が振動するとき、その前面と背面から出た音は逆位相になっている。このため、もし振動板の背面から出た音が前面に回り込むと、打ち消し合ってしまって音は聞こえない。音が回り込む回折効果は低音になるほど大きいので、低音を発音するためには、振動板の背面から出る音を何らかの方法で遮断する必要がある。

密閉型 – Wikipedia5

スピーカー背面から出る音を遮断するとはいっても、JB23のスピーカー取り付け部はフロントもリアも隙間が多く、背面は広大な空間につながっていますので、完全に隙間を埋めることは事実上不可能です。やり始めたらキリがありません。完璧はあり得ませんからそこは割り切って、最小の手間と費用で最大の効果を得る方向を模索します。

フロントスピーカーのデッドニング

まずは手始めに試験的な施工として、フロントスピーカーのみデッドニングしてみます。エーモン音楽計画 デッドニングキット スピーカー周辺簡単モデル 2441を1セットだけ使用して、最低限の施工をすることにしました。内容は以下の通りです。

  • スピーカー背面の吸音
  • スピーカー前面外周の遮音
  • キックボードカバー内の空間の吸音
  • スピーカー取り付け部の周辺の制振

ごく簡易なものではありますが、ただスピーカーを取り付けただけの従来の状況から比較すれば、理論上はこれだけでも大きく改善するはずです。スピーカー前面から出る音を車室内だけに届けるとともに、スピーカー背面から出る音を吸音、キックボード内での反響を抑え、スピーカー取り付け部のビビりや共鳴を抑える、というメニューです。

フロントスピーカー背面の吸音

上の写真は、フロントスピーカー背面に吸音材を貼り付けた様子です。エーモンのキットに付属していた吸音材はそのままでは大きすぎたのでカットし、スピーカー背面の鉄板に貼り付けています。フロントスピーカーの取り付け部の隙間はリアほど大きなものではないため、スピーカー背面の吸音ができれば、逆位相の音波の遮断はいくらか成功すると思われます。

キックボードの防音と吸音

上の写真は、防音テープを使ったスピーカー前面の遮音と、余った吸音材でキックボードの反響とビビりを抑えた状態です。本来であればこのスピーカー周辺防音テープは振動板との干渉を避けるため、スピーカー本体の外径に沿って貼りつけるものです。しかし今回は、キックボード側に取り付けました。理由は以下の通りです。

  • スピーカー側に防音テープを取り付ける場合、スピーカー取り付け穴の上部にある配線を通すための逃げの部分の処理が難しいため
  • 今回のデッドニング施工の結果が良好だった場合、より性能の高いスピーカーに交換したいため、スピーカー周辺防音テープを無駄にすることがないように

変則的な施工になってしまいましたが、キックボードのスピーカーグリルは実際のスピーカーよりも大きいため、防音テープと振動板の干渉はなく、配線の逃げの穴も防音テープでうまく塞がる形になり、スピーカー前面から出る音をまっすぐ車室内に届けることに成功しました。このあたりは実車の状況を見ながら工夫していくことが肝要です。

そして施工の結果ですが、まさに驚きでした。音楽を再生してみると、以前よりもはるかに音が大きくなっており、驚いてボリュームを数段階ほど落としました。音の良し悪し以前の問題として、それまで打ち消されて出ていなかった音が出るようになったことで再生音が大きくなったのです。音質のほうも、全体的に音圧が上がり、迫力が増しています。

従来のポン付け状態が、いかにスピーカー本来の性能をスポイルしていたかを思い知らされました。正位相と逆位相の音波が互いに打ち消し合う環境で、無理に音を出すためにボリュームを上げて対処していたわけです。スピーカーの性能を無駄にしていたばかりか、アンプの性能まで無駄にしていたということがわかりました。

なお再生できる音域を確認すると、あまり力強いものではないものの、65Hzくらいの低音まで再生できていました。100Hz付近の中低音はまったく問題なく綺麗に鳴ります。以前とはまったく別物のようです。この結果、フロントスピーカーとサブウーファーの間に横たわっていた低音の谷は解消し、完全に音がつながるようになりました。

なおオーディオチェックは、ヘッドユニットに接続したiPodで以下の動画を再生して実施しています。現在はこうしたオーディオチェック用の音声(ステレオチェックなども含め)が無料で手軽にネット上から入手できるようになったため、音響素人の貧弱な感覚に頼ることなく、きちんとした確認作業ができます。まったく、いい時代になったものだと実感します。

フロントおよびリアのスピーカー選択

デッドニングによってここまで音響が改善することがわかれば、さらに欲が出てきます。この時点で装着されているカスタムフィット(純正置き換え型)スピーカーは前後とも16年間使い続けてきた安物です。これを一新することで、さらにオーディオ環境をグレードアップさせることを検討します。次のような観点から、前後スピーカーを検討しました。

フロントスピーカーはセパレート
従来はフロントスピーカー配線に割り込む形でツイーターを設置しており、音のバランスが崩れ気味になっていた。この改善として、次はネットワークを介してウーファー部とツイーター部を別体にしたセパレート型にすることで、音のバランスを崩すことなく音像定位を上げる効果を狙う。
リアスピーカーは直径12cmのコアキシャル
従来はフロントと同じ直径10cmのスピーカーユニットを装着していたが、本来JB23ジムニーのリアスピーカー取り付け穴は直径12cmのスピーカー用になっている。わずか2cmの差に過ぎないが、次は直径12cmのスピーカーを装着することで少しでも低音の再生を補助する。デッドニングは必須。

スピーカーを選択するにしても、エンジン音も走行音も賑やかなJB23ジムニーですから、上位グレード製品を導入することは考えません。普及グレードで十分です。普及グレード製品に限って選択をする場合、10cmセパレートや12cmコアキシャルというのは選択肢がそう多くありません。2017年現在ですと、適合するのは以下のものだけです。

フロント(10cmセパレート)
リア(12cmコアキシャル)

このラインナップであれば、バランスの面では前後ともアルパインで揃えるのが無難そうに思いますし、実際にJB23ジムニーユーザーの多くがその選択をしているようですが、僕はフロントにカロッツェリアTS-F1030S、リアにアルパインSTE-G120Cを選択しました。理由は単純なもので、それぞれカタログデータ上での再生周波数帯域が広い方を選んだ、というものです。

普及グレードということで、いずれの製品も価格帯も性能もほぼ同一ですし、今後別の製品が発売されて選択肢が増えたとしても状況はそう変わらないでしょう。カタログデータ上の細かな違いは誤差のようなものですし、最終的には好みで選べばよいでしょう。いずれにしても選択のポイントとしては、フロントに10cmセパレートを、リアに12cmコアキシャルを選ぶ、ということだけです。

フロントスピーカーの交換とツイーター設置

さっそく取り寄せたカロッツェリアTS-F1030Sを取り付けます。すでにデッドニングは済んでいるので、従来のスピーカーと交換すること以外にすべきことは、ツイーターとのネットワークの配線だけです。キックボード内でネットワーク(ツイーター用配線)の分岐をさせれば、純正のスピーカー配線をそのまま使用できるため取り付けが楽です。

ネットワークからツイーターの配線はそのまま上に伸ばし、Aピラーの内装の根元からダッシュボード上に出せば、特別な処理などは何もしなくても配線をうまく隠すことができますので、こちらも非常に楽なものです。まったくのDIY初心者だったとしても、問題なく作業できるものと思います。

フロントスピーカーのウーファー部を装着

上の写真はTS-F1030Sのウーファー部を装着した様子です。ネットークなどは上部にまとめました。

ダッシュボード上にブースト計とならんで設置されたツイーター

上の写真はダッシュボード上に設置したツイーターです。運転席側のダッシュボード上にはブースト計が取り付けてあるため、ツイーターの設置場所を左右で微妙に変えましたが、固定前に何度もテストし、問題がないことを確認してから固定しました。

この時点ですでに、以前の状態とは比べられないほど良くなっています。同じ普及グレードとはいえ、最安ラインだった従来品と、中心価格帯の新しい製品では、その性能差には歴然とした違いがあります。以前よりも自然で柔らかい音になり、表現力が格段に向上しました。リアスピーカーのデッドニングと交換を前に期待が高まります。

リアスピーカーのデッドニングと交換

先にお伝えしておくと、JB23ジムニーのリアスピーカー周辺は非常に厄介です。DIYがあまり得意ではない作業者の場合は、リアスピーカーレスのままにしておくほうが得策です。というのも、リアスピーカーの取り付け穴へのアプローチが大変であるうえに、リアスピーカー取り付け穴周辺の設計上の問題から、下手に作業するとかえって音を悪くする(以前の僕の車がそうでした)からです。

リアスピーカーの取り付け穴にアプローチするためには、後部座席すべてとドア後部の内張すべてを取り外す必要があります。JB23ジムニーはそれほど凝った造りではないため、この作業は難易度で言えばそう高くはありませんが、難しくはないというだけで手間と時間はかかりますし、DIY初心者にとっては厳しい作業となるでしょう。

なおこの作業には、フロントでも使用したエーモン音楽計画 デッドニングキット スピーカー周辺簡単モデル 2441を1セットのほかに、エーモン音楽計画 防音テープ(30mm厚) 幅約20mm × 600mm × 2本 2179を1つと、エーモン音楽計画 制振吸音材 約70mm × 70mm 厚さ約21mm・20枚入 2366を1つ使用しました。これでも最低限の内容で、さらに材料を減らすのは困難です。

後部座席と後部の内張をすべて外した様子

上の写真は、後部座席とリアの内張りをすべて外した状態です。一人で作業する場合、作業開始からここまで到達するのに、慣れた人でも30分程度はかかります。

リアスピーカー背面の吸音

上の写真は、リアスピーカーの取り付け穴の奥に吸音材を貼り付けた状態です。この写真だけ見れば十分な施工に見えるかもしれませんが、別の角度から見ると非常に残念な状態であることがわかります。下の写真は、同じ場所を車両後部方向から見たものです。スピーカー取り付け穴の背後に巨大な空間があり、しかもそれがスピーカー前面とつながっていることがわかります。

リアスピーカー背面の吸音材を別の角度から

しっかりしたデッドニングを施工するのであれば、上の写真の手前側に見える開口部を塞ぐか、または空間を埋め尽くす量の吸音材または防音材を詰め込むことが必要でしょう。僕の場合は、スピーカー背面を最低限だけでも吸音していれば、あとはスピーカー前面の遮音をきちんとすることで十分な効果が得られる(それ以上の施工は費用対効果が合いにくい)と考え、この内容にしています。

取り付けられたリアスピーカーと、その外周に沿って貼られた防音テープ

上の写真は、アルパインSTE-G120Cを装着し、その外周に沿って防音テープを装着した状態です。さらにその周辺の金属部にはポイント制振材が貼ってあります。下の写真はこれを少し引いた角度から見たところです。タイヤハウス内側や開口部の前部などにポイント制振材を貼っていることがわかります。これはフロント側の施工で余ったポイント制振材を流用しています。

リア側の内張の内部

通常であれば施工はここまででもそれなりの効果が得られるのでしょうが、JB23ジムニーのリアスピーカー周辺はこれだけではまったく不十分です。この部分の内張はドア後部からリアハッチまで一体になっており、内部に巨大な空間があります。そしてこの空間とスピーカーを遮断するためには、スピーカー外周に沿って貼った防音テープだけでは不足です。スピーカーグリルが湾曲しているためです。

リア内張内部の吸音と遮音

上の写真は車両後部の内張の内部です。写真左側にスピーカーグリルがありますが、これが湾曲しているため、スピーカー側に貼った防音テープだけでは後部側(写真でいえば右方向)に隙間ができ、後部に広がる空間との遮断ができません。そこで上の写真のように、スピーカーグリルに沿って防音テープを貼り、スピーカーの前面と背面を確実に遮断します。

スピーカーの前面と背面の空間の遮断は非常に重要で、従来はこれができていなかったために、フロントと同じスピーカーをつけていたにも関わらずリアからはひどい音しか出ず、リア側のボリュームを絞る必要があるほどでした。ここをきちんと施工しない限り、リアスピーカーはノイズ発生装置のようにしか機能しませんから、リアスピーカーレスのほうがまだマシという結果になります。

またリア側内張内の広い空間での音の反響を抑え、スピーカー背面から出る逆位相の音が室内に漏れ出てこないようにするために、内張の内部には制振吸音材を配置しています。車両の最後部の制振吸音は影響が小さいと考え、制振吸音材の配置はスピーカーに近い車両前方を中心に施工しました。この効果については未検証ですが、おそらく無駄にはなっていないでしょう。

まとめ

ここまでの写真で見てわかるとおり、リアスピーカー背面の吸音といい、内張内の制振吸音といい、見事なまでに最低限の施工であり、スカスカです。スピーカーが本来持っている性能を発揮させるという観点からはこれで十分と考えますが、しかし、本格的なオーディオ環境を整えるという観点ではまったく不足です。今回は以下のような施工はしていないためです。

  • 車外から浸入してくる騒音を遮断する
  • 車両が発する振動を抑える
  • 車室内での音の反響を整える

今回の施工では、上記のようなことは一切省いています。これらはJB23ジムニーという車の性格に直結する問題であり、こうしたことを気にするようであれば車そのものを乗り換えたほうがよいと考えられるためです。どんなに頑張って高度な施工をしたところで、高級乗用車のような静粛性は得られるはずもなく、その点は割り切りが必要です。

当然ですがJB23ジムニーはオーディオマニア向けの車ではありません。あくまでもアウトドアを楽しむ車ですから、その方向性は失わないように施工したいものです。狭い社内スペースを無駄にしないこと、制振処理などで車重を増やし過ぎないこと、お金をかけすぎないこと、車外の音を遮断しすぎないこと、などです。アウトドアでの快適さこそがJB23ジムニーの真骨頂です。

アウトドアでの快適性こそがJB23ジムニーの真骨頂

その上で音響を改善するのであれば、カスタムフィット(純正置き換え型)スピーカーへの交換と、そのスピーカー本来の性能を発揮させるための施工が重要であり、そのため最低限のデッドニングは必須、とりわけスピーカー前面と背面の遮断と背面の吸音は必須であるということです。この施工だけで、アウトドアでの性能をスポイルすることなく、音楽環境を劇的に改善することができます。

ここで再度、使用した機材と資材をまとめます。冒頭で述べた前提の通り、できる限り小さな予算の中で、可能な限り良い音を手に入れるという方向性ですので、高価なものは何一つ使用せず、普及グレードの機材と入手しやすい資材ばかりで構成しています。

今回の作業で心から実感したのはデッドニングの威力です。この車を買った17年前の時点でもデッドニングの重要性はマニアの間で語られていましたが、あくまでもそれはカーオーディオマニアたちの間の話であって、一般向けの簡易で安価なキットなども販売されておらず、ジムニーのような賑やかな軽自動車に施工するという発想はありませんでした。

それが今では、簡易で安価なキットが発売されたことでデッドニングがぐっと身近になり、大きな予算を注ぎ込む必要もなく、純正からは比較にならない高音質を手軽に得ることができるようになりました。カスタムフィットスピーカーへの交換と、それと同時に実施するデッドニングは、軽自動車でも十分に費用対効果の合うオーディオカスタマイズであり、おすすめです。

追記:この後、静音化を目的としたフルデッドニングをDIYで実施しました。もとがうるさい車だけに効果は絶大で、別の車になったかのような快適さになり、オーディオ環境も劇的に改善し、大いに満足しています。10kg弱の重量増というマイナス面はありますが、運転疲れの軽減や官能性能の向上を考えればおすすめできる施工です。

脚注

  1. ECLIPSE AVN135M – Amazon.co.jp ↩︎
  2. Clarionクラリオン | SRT103 ↩︎
  3. KENWOOD コンパクトサブウーファー KSC-WX1 ↩︎
  4. KFC-ST7(生産完了商品)|チューンアップ・スーパーツィーター|ケンウッド ↩︎
  5. 密閉型 – Wikipedia ↩︎